外壁サイディングのコーキングとは?劣化症状やメンテナンス方法も解説
外壁には多くの種類がありますが、日本の戸建てでは、パネルを張り合わせたサイディングという外壁が多く採用されています。
このようなパネルを張り合わせた外壁では、パネルとパネルの間に隙間ができてしまいますが、この隙間を防ぐために充填されている白いゴムのようなものがコーキングです。
コーキングは隙間を防いで雨漏りから家を守り、また地震などの衝撃を緩和するなどの大切な役割を担っています。
そのためコーキングには定期的なメンテナンスが欠かせません。
この記事では、このコーキングの劣化症状と、メンテナンスの方法について解説します。
外壁サイディングのコーキングとは?
外壁サイディングに使用されている「コーキング」とは、サイディングのパネル同士のつなぎ目の隙間に充填されているゴムのような弾力性のあるものを指します。
シーリングと呼ばれることもありますが、基本的におなじものを指します。
ここでは、このコーキングの種類や特徴、役割について紹介します。
コーキングの重要な役割について
コーキングは多くの場所で使用されていますが、主な役割としては、
- 建物に雨水が浸入するのを防ぐ
- 建物の揺れによる衝撃を吸収・緩和する
というものがあります。
建物に雨水が浸入するのを防ぐ
外壁に使われているコーキングは、前述のように、外壁パネル同士の隙間を埋めることで、雨水などが建物の内部に浸入することを防いでいます。
コーキングに隙間があったり、劣化してひび割れができてしまうと、隙間から雨水などが建物の内部に入ってしまい、雨漏りの原因になることがあります。
コーキングは外壁の他に、サッシやドアなどの隙間にも施工されています。
そのためコーキングの劣化は建物の防水性の低下につながり、雨漏りの原因になりやすい箇所でもあります。
建物の揺れによる衝撃を吸収・緩和する
コーキングには、建物自体の歪みや自動車などの振動、地震、そしてサイディングそのものが気温の変化で伸縮することによって生じる動きを緩和する役目があります。
こうした建物の動きはパネルに負荷を与え、ひび割れなどの原因となってしまいます。そのためコーキングが衝撃を緩和・吸収することで建物を保護しているとも言えます。
ドアやサッシのコーキングには開閉による衝撃を吸収する役目もあります。
コーキング材の成分による種類と特徴
コーキングには、成分や原料の違いにより、いくつか種類があります。
コーキングを大きく分類すると
- 変成シリコーン系
- ポリウレタン系
- シリコーン系
の3種類があります。
「変成シリコーン系」は、屋根や外壁でよく使われるコーキングで、耐候性が高いのが特徴です。
耐用年数が10〜15年程度です。
シリコン系よりも価格は高いですが、上から塗装が可能で、塗装前後どちらでも使用可能なため、特にサイディングの外壁ではよく使用されています。
「ポリウレタン系」は、変性シリコーン系よりも価格が安いのですが、紫外線に弱いというデメリットがあるため、外壁に使用する場合は、保護するために塗装が必要になります。
比較的安価で弾力性があり、衝撃を吸収する性質があります。サイディングの外壁やコンクリートの目地によく使用されます。
耐久性が低いのがデメリットですが、近年では耐久性が高いものもあります。
「シリコーン系」は、浴槽やキッチンなどの水回りの補修によく使われるコーキングです。塗装して保護することができないため、外壁などの屋外での使用には向いていません。
外壁では変成シリコーン系と、ポリウレタン系のものがよく使用されます。
1成分系と2成分系の違いとは?
コーキングには、原料による種類の他にも、1成分系と2成分系という2つの仕様があります。
1成分系は主に一般向けに使用され、2成分系はプロ向けのコーキングです。
「1成分系」は、そのまま使用できるコーキングです。硬化剤を使用しなくても空気に触れると自然に硬化します。1成分系はカートリッジタイプのため、すぐに使うことができ扱いも比較的容易なためホームセンターでも購入可能です。面積が小さい補修やDIYでよく使用されます。
価格は2成分系よりも高い傾向があります。
「2成分系」は、コーキング剤と固めるための硬化剤が別々になっていて、使用前に混ぜ合わせる必要があります。そのため混ぜ合わせるタイミングや分量など専門的な知識や経験が必要です。プロ向けの製品といえますが、その分耐久性は高くなっています。
固まるまでに一定に時間が必要ですが、大規模な補修や長期間の耐久性が必要な場合に向いています。
コーキングの耐用年数と劣化症状について
コーキングは、一度施工すればそのままでいい、というものではなく、年月が経つことで劣化していきます。
ここでは、コーキングの耐用年数と劣化症状について紹介します。
コーキングの耐用年数は約5~10年
コーキングの寿命は、種類や使用する箇所によって違いがありますが、5〜10年程度と言われています。
コーキングには、可塑剤というゴムのように弾力性を持たせるための成分が含まれています。
可塑剤が劣化するとコーキングが弾力性を失って、さまざまな劣化症状が発生します。
隙間を塞ぐコーキングが劣化すると、雨水の侵入による雨漏りを引き起こす可能性が高くなるため、築10年が経過したら一度点検することをお勧めします。
コーキングの主な劣化症状
コーキングの劣化症状としては、下記のものがあります。
- 肉やせ
- チョーキング
- ひび割れ
- 破断
「肉やせ」は、可塑剤が溶け出すことで、コーキングの厚みが減少する症状です。
最初に施工した際に、コーキングの量が少ないと起こりやすい症状です。この肉やせを放置すると、コーキングのひび割れや破断の原因になります。
「チョーキング」は、コーキングが紫外線などの影響で、コーキングに含まれる顔料が表面に浮き出てくる症状です。
コーキングに触れた際に、粉のようなものが付着する場合、このチョーキングが発生している可能性があります。
「ひび割れ」は、コーキングが劣化したことで弾力性がなくなり、建物の揺れに追従できなくなることで発生します。
ひび割れを放置すると、建物の内部に水が浸入する可能性があり、雨漏りの原因になります。
「破断」は、ひび割れがさらに広がることで穴が開く症状です。放置すると大量の水が建物に浸入するため、発見した場合はすぐに補修する必要があります。
コーキングは定期的なメンテナンスが必要
コーキングは、劣化するとさまざまな症状が現れます。
コーキングの劣化はあまり気にすることがない箇所ですが、放置すると雨漏りの原因になるため、定期的なメンテナンスが必要です。
もし新築から10年以上経っているのであれば、コーキングのメンテナンスについて検討してみてください。
コーキングの劣化別修理方法
コーキングの傷み方によって施す修理方法が異なります。
①外壁とシーリング剤の間に隙間ができている場合
〈原因〉
・プライマーの塗り忘れ、プライマーを塗る際にムラを作ってしまった。
・外壁が水分を含むなど、外壁の少しの変化にシーリング材が耐えられなかった。
〈対策〉
・プライマーをしっかり塗装し、ボンドブレーカーというテープを貼ってからシーリングを打ちます。
②シーリング材の真ん中部分にヒビが入っている
〈原因〉
・シーリング材の劣化。寿命。
〈対策〉
・耐久性の高いシーリング材を打ち直します。
③シーリング材の後ろのバックアップ材が見えている
〈原因〉
・シーリングの厚み不足と劣化。
〈対策〉
・シーリング材をうち、厚みを重ねる。
④シーリングが取れた状態。欠落している状態
〈原因〉
・プライマー不足。
・シーリング材の選定を誤っている。
〈対策〉
・しっかりとしたプライマーを塗り、耐久性の良いシーリングを行う。
ここまでくるとスカスカの状態なので早めの対策をおすすめします。
このようにシーリングの状態をしっかり見て、適正な修理をするのは非常に大切です。
外壁サイディングのコーキングのメンテナンスの方法と注意点
サイディングの外壁のコーキングは、定期的なメンテナンスが重要です。
ここでは、このメンテナンスの方法と注意点について紹介します。
DIYでのコーキングのメンテナンスはおすすめできない理由
近年は、いろいろなものをDIYで行う方も増えています。
ただ、サイディング外壁のコーキングの補修はDIYで行うには難しく、危険性もあります。
その理由としては、
- 適切な材料の選定や、正しい施工方法に関する知識が必要
- 適切な施工をしないと密着率が足りずにしっかりと接着しない
- 厚みが均一にならず隙間ができてしまう
- 十分に硬化せずに劣化が早まる
- 高い場所で作業するため危険がある
などがあります。
コーキングの補修は簡単そうに見えますが、場所に応じて適切なコーキングを選んだり、施工前にプライマーを塗布するかどうか、施工の方法など、専門的な技術が必要な作業です。
また、高い場所で作業をする必要があるため、危険が伴います。
間違った施工をしてしまうとすぐに劣化してしまったり、雨漏りでは余計に悪化してしまうこともあります。
そのため、コーキングの補修は専門業者に依頼しましょう。
コーキングのメンテナンスは外壁塗装と同じタイミングで行う
コーキングのメンテナンスは、外壁塗装のメンテナンスと同時に行うようにしましょう。
外壁塗装では、安全かつ確実な工事のために足場を設置します。コーキングの補修でも特に2階部分は高所作業が必要なため、同様に足場が必要です。
足場代は、一般的に15〜20万円程度かかるため、外壁塗装で建てた足場で同時にコーキングの補修も行うことで、足場代を節約することができます。
コーキングの補修方法:打ち替えと増し打ちの違いとは?
コーキングの補修には、「打ち替え」と「増し打ち」という2種類の方法があります。
打ち替え
打ち替えは、古い既存のコーキングを撤去して、上から新しいコーキングを充填する方法です。
打ち替えを行うことで、コーキングそのものが新しくなりますので、打ち替えが可能な場所では、打ち替えで補修するのがおすすめです。
打ち替えをしたコーキングの耐用年数は7〜10年程度あります。
増し打ち
増し打ちは、既存の劣化したコーキングの上から新たにコーキングを充填する方法です。打ち替えよりも費用は安いですが、古いコーキングはそのままのため、打ち替えよりも耐久性は弱くなります。
また、内部の古いコーキングにひび割れなどの症状が出たとしても、新しいコーキングがあるため気づきにくくなります。
新規のコーキング材が既存のコーキング材と馴染みにくいため、増し打ちしたコーキングは徐々に剥がれていきます。
増し打ちは打ち替えよりも工事費用が安くなりますが、増し打ちをしたコーキングの耐用年数は2〜5年程度しかありません。
コーキング補修の費用相場
先にご紹介した、主なコーキング補修方法である「打ち替え」と「増し打ち」のそれぞれの費用相場をご紹介します。
打ち替えの費用相場
打ち替えでは、既存のコーキングを除去するための費用と、新たに打つコーキングの費用がかかります。
打ち替えの相場の目安としては、
コーキングの除去が1〜3万円程度、新規のコーキングの費用が1平方メートルあたり900〜1,200円程度となっています。
実際の工事費には、ここに足場代が追加されます。
増し打ちの費用相場
増し打ちでは、既存のコーキングの上から充填するため、打ち替えで発生していたコーキングを除去する費用が不要です。そのため、打ち替えよりも費用が安くなります。
増し打ちの費用の相場は、1平方メートルあたり500〜900円です。
増し打ちにはコーキングの除去費用はかかりませんが、足場代は必要です。
まとめ
今回、外壁サイディングに使用されているコーキングの役割や主な種類と特徴、そして劣化症状とメンテナンスの方法についてご紹介しました。
コーキングは外壁パネルの隙間に充填するもので、建物内部に水が浸入するのを防いだり、建物の揺れなどを緩和するなど建物を保護する役割があります。
コーキングは寿命が5〜10年程度で、劣化するとチョーキングやひび割れなどの症状が現れます。劣化症状を放置すると、雨漏りの原因になるため注意しましょう。
コーキングを補修する際にはDIYではなく、プロに頼むのがおすすめです。
間違った場所へ施工したり、素材の選定を誤ると適切に施工されず、不具合の原因となることもあります。
定期的なコーキングの補修やメンテナンスが大切な家を守るためには重要です。